背嚢 重荷を背負った 女性よ、 お前の袋は何か。 「時の砂袋、 砂の一粒一粒が悲哀だ、 悲哀は數へきれない。」 女性よ、 お前の髪は亂れる、 腰に渦巻く雲は何か。 「明日の魂、 魂は希望に呼びかけ、 魂は平和の頌を口吟む。」 濱邊は荒涼だ、 私は幻を嵐に見る、 ああ、何もの幻か。 「この世鎮めの人柱、 彼等は皆を決して、 皆部署についてゐる。」 女性よ、 お前の背嚢は重い、 お前は何を背負ってゆく。 「将来の種子、 人生はその一粒一粒に、 明日の豊華を待ち設ける。」 ( 野口米次郎「背嚢(遺稿)」 『蝋人形』1947年9月、8-9頁 )
「二重国籍」詩人 野口米次郎
( 堀まどか著、名古屋大学出版会、2012.2.29 初版第1刷発行 )より
( 2023.10.13 & 2024.2.8~9 イラスト作成 Bing Image Creator +加工 )