ププルコ こーろころ
ひょうたん ポックリコ
かえるのガッコがうたいながら、
つくしんぼをゆらし、はねてきました。
あたたかくなったので、
おちばのねどこからでたのです。
「もうそろそろ、ププルコさんは
めがさめたかな?」
おがわのほとりのクワのこずえ、
ひょうたんのかたちのマユが
ぽっくりとわれ、あくびをしながら
ふしぎなおんなのこがでてきました。
「あれ?ププルコさんは
どこにいったんだろう」
「わたしよ、ガッコさん。
はねがはえて、きょうからは
ピピルコなの」
「ピピルコさん?……あ、でも
ププルコさんとおなじこえ!」
「ププルコはとべなかったけど、
これからはガッコさんとどこでも
いっしょにおさんぽできそう」
ピピルコのことばに、ガッコは
うれしくなって、ぴょんぴょん。
「レンゲをみにいこう、きっと
きれいにさいているよ」
ぴょんぴょん、ひらひら、
ガッコとピピルコがでかけてみると、
あたりいちめんうすくれないの
レンゲのはなでいっぱいです。
ピピルコはめをまるくして、
みとれるばかり……
「こんにちは、クエビコさん」
「おおガッコ、ひさしぶり。
ふゆのねむりからさめたのかい。
おや、かわいいおつれさんだ」
「このこはピピルコさん、はじめて
そらをとんできたんだよ」
「そうかい、そうかい、はるだなぁ」
かかしのクエビコは、きもちよさそうに
うたいはじめました。
ふゆになれば
しがこ(すがこ)もはって
どじょっこだの ふなっこだの
てんじょこはったと おもうべな
クエビコがいいこえでうたうので、
ガッコはけろろけろろ、
ピピルコもきれいなこえで
いっしょにうたいました。
はるになれば
しがこ(すがこ)もとけて
どじょっこだの ふなっこだの
よるがあけたと おもうべな
うたいながらピピルコは、
ナズナのみをゆすって
シャランシャランとならしました。
けろろけろろ、シャランシャラン。
なつになれば
わらしこおよぎ
どじょっこだの ふなっこだの
おにっこきたなと おもうべな
にぎやかにうたっていると、
ざわざわざわざわ、おがわがなみだち
「うるさいぞー!」
と、われがねのようなおおごえが……
グラグラとじめんがゆれて、
ヘビのようにながいひげをふるわせ、
くろいオオナマズがおどりでました。
「なにがはるだ、なつだ、おれさまは
もっとねていたいのに。
さわがしくて、たまらんわい!」
オオナマズのながいひげが、
にょろりとのびてガッコにまきつき、
ちゅうにつるしあげました。
「うるさいから、くってやるぞ」
「うわーやめろー」
「ガッコさん!」
「にげてピピルコさん……」
くるしそうなガッコのすがたに、
ピピルコはなみだをこぼしました。
「たすけて、おねがい」
シャランシャラン
かぜにほそいねいろをひびかせ、
ナズナのすずがゆれました。
「わしのてあしがじゆうになれば……」
かかしのクエビコがくやしくて
そらをみあげると、ぽつりぽとん……
あまつぶがおちてきました。
ぽつぽつ、ぽとん……
あっというまにあたりはくらくなり、
はげしいあめが
レンゲのはらにふりそそぎました。
ピカッ!
いなびかりがはしって、
おがわのそばにおちました。
ピカッ、ピカッ、ピカッ!
あばれるオオナマズをふうじるように、
いなずまのやが、つぎつぎじめんに
つきささります。
ドーン!ゴロゴロゴロ……
おおきなたいこをうちならし、
そらからカミナリがおりてきました。
「こら、オオナマズ。
ふゆのあとには、はるがくるのだ。
あばれるのはやめろ」
きびしいかおのカミナリは、
オオナマズをとじこめたいなずまを
ぬいてやりながら、いいました。
すっかりめをまわしたオオナマズは、
ながいヒゲをしょげかえらせて、
みなそこへとしずんでいきます。
「ねむいなら、ねていろよ」
まだこどものカミナリは、
ふっとわらいました。
クエビコのかげから
ガッコとピピルコがそっとかおをだし、
「たすけてくださって、ありがとう」
と、ふるえながらいいました。
カミナリのこは、
「れいなら、さっきのうたでいい」
と、にっこり。
「おいらは、ゴロリン。
おいらもいっしょにうたいたいけど、
あめがふってピカゴロしちゃうからな」
カミナリのこは、くもをよぶと、
つむじかぜにのってとびたちました。
「そらのうえでたのしくきいていたぞ、
またうたっておくれ」
あめがあがり、いちめんのレンゲが
しずくをのせて、はんなりきらきら。
「カミナリさまのおでましで、
ことしのなえも、じょうぶにそだつな」
クエビコがつぶやき、
ガッコはほっとして、ふと
くちずさみました。
ププルコ こーろころ
ひょうたん ポックリコ
なみだがかわいたピピルコも、
こえをあわせます。
ガッコは けーろけろ
いなずま ピッカリコ
ゴロリン カミナリコで
なえほの みのりはザックザク
(おや、とおくのそらで、
そっとうたうゴロリンのこえも
きこえたかもしれません……)
はるのさんぽは、まだまだこれから。
( 2024.3.24 あらすじ初稿 全文かな書き )
( 漢字については要再考 )
ピピルナさん
セルピナさんの眷属で、妹分。
「ひひる」は蛾の和名で古語だという。
古代日本語は、ヒをピと発音したはず、
ゆえに蛾(蚕の成虫を含む)=ピピル?
蛾(古代日本では蝶と蛾の区別なし)を
「かわひらこ」と呼称したともいうし、
ヒヒル(ピピル)の語感もなんとなく
可愛らしいような……
海のセルピナさんに羽をつけて、
空を舞う豊穣のピピルナさん……
などと、イラストを描きつつ夢想。
(灯を持つ妖精さんのつもりが何故か
銅鐸っぽい物に変わってしまった……)
(輝く赤銅のベルを鳴らす妖精さん?)
(蛾と月の乙女……)
(銅鐸には蛙や蛇が刻まれていた例も)
(豊穣の雷神・水神=暴風雨神と
銅鐸との繋がりは?)
(ピピルナさんが鳴らす鐘で、
雷神クリルンくんが竜とともに現れる)
(カエルや案山子などが登場する夢?)
(暴れん坊の大ナマズを封印する)
春の宴
深紅のアネモネが大地を染めたら、
風が吹き 帆がふくらんで、
私は水面を旅する、遠く。
河を渡り 海原へと。
海の底でもアネモネ※がそよぎ、
セイレーンは歌を思い出す。
薄紫の蓮華※※が大地を染めたら、
私は水辺で身をきよめ、
光をまとい運ぶ、花の香を。
種をまき 芽吹きを祝えと。
野山をゆり起こし舞いながら、
琵琶持つ乙女に宿って歌う。
鳥たちは旅する。
男たちも旅する。
風に乗り 波をこえ
私の歌に招かれて。
※sea anemone=イソギンチャク
※※ レンゲソウ、原義は蓮・睡蓮
( 2023.7.9 & 12.18 +微修正 イラスト作成 Bing Image Creator )
俵はごろごろ
俵はごろごろ お倉にどっさりこ
お米は ざっくりこで
ちゅうちゅうねずみは にっこりこ
お星さま ぴっかりこ
夜のお空に ぴっかりこ
いねむりごろごろ 舟こぎぎっちんこ
こげこげ こっくりこで
おやおやお目目は ぱっちりこ
ちょうちん ぽっかりこ
鼻のちょうちん ぽっかりこ
雷ごろごろ いなずまぴっかりこ
夕立ち ざんぶりこで
洗濯 びっしょりこ
お庭も びっしょりこ
雨でお庭も びっしょりこ
( 作詞:野口雨情、作曲:本居長世
1925年=大正14年 発表 )
俵はごろごろ 童謡の歌詞 (worldfolksong.com)
いもむし ごろごろ
ひょうたん ぽっくりこ
( 江戸時代からのわらべ歌 )
いもむしごろごろ わらべうた・遊び歌 (worldfolksong.com)
( 2024.2.28 イラスト作成 Bing Image Creator )
いと おかし – ぶるーまーぶる (fairy-scope.com)
なみのこもりうた
わたしのたからもの、
うみべでひろったガラスのかけら、
まあるくてすべすべ、なみのいろ。
そっと てのひらにのせてねむると、
ざざぁんと しおさいがよせてきて、
すずしいめをした あのこにあえる。
あのこはいつも にじいろの
イソギンチャクにこしかけて、
リュートをかなで、
すんだこえで うたっているよ。
おともだちと けんかしちゃって
ごめんね いえなかったひのよる、
まどのカーテンが ばたばたゆれ、
くらいへやは ふかいうみのそこ。
ゆらゆらおよぐ イジワルくらげ。
ハロウィンの ランプそっくりに
ぺかぺかひかって わらいながら、
みんなそろって むれてながれる。
「ひかるぜ
ビリビリ
しびれるぜ
そこのけ
ユラユラ
おとおりだ
おれたちゃ
きままな
あばれんぼう
いっしょに
うみのそこで
パーティしようぜ」
え?
いやです、くらいところ
きらいだもん。
「おれたちのさそいを
ことわるだと?
なまいきな こどもめ、
どくのはりで
さしてやろうか?
おれさまは うみの
スズメバチだ!」
いやあだよ、あっかんべー。
まくらをかぶせて
ふんづけちゃえ!
「あぶなーい!それは
ハチ、うみのならずもの。
ヒレにさわっちゃいけない、
にげて。
わたしはセルピナ、
すぐに たすけをよぶわ」
おおあわての あのこが、
ちいさなまきがいの ふえを
ちからいっぱい ふいた。
「よんだかい?
おいらはクリルン。
ほいきた、まかせろ」
げんきなおとこのこが
ひかるつえを かざしたら、
ピカピカの いなびかり。
やのように
いなずまがとんで、
あばれんぼうたちが
うごけなくなるまで
グルグルまきにしばった。
おとこのこが さけんだ。
「セルピナさん、こいつらを
ふくろにとじこめて!」
「オッケー、クリルンくん」
あのこは うなずいた。
にじいろのイソギンチャクが
おおきなくちをあけて、
あばれんぼうたちを
つぎつぎにすいこんだ。
クラゲもエイも こわいハチも
けむりのように きえてしまった。
イソギンチャクのふくろが
やさしいひかりに つつまれて、
ただようマリンスノーへと
ゆっくり かわっていく……
「うみのそこにしずんで ねむり、
また あたらしい ゆめになるね」
と クリルンくんがいった。
「おやすみ、ゆめのかけら」
と セルピナさんがささやいた。
わたしのたからもの、
うみべでひろったガラスのかけら、
まあるくてすべすべ、なみのいろ。
そっと てのひらにのせてねむれば、
ざざぁんと しおさいがよせてきて、
すずしいめをした あのこにあえる。
あのこはいつも にじいろの
イソギンチャクにこしかけて、
リュートをかなで、
すんだこえで うたっているよ。
ねむれ ねむれ
どんなふかい
なみのそこも
てらすあかりが
ここに
ここにあるから
ねむれ ねむれ
どんなかなしい
なみだもいやす
ゆめのあかりが
ここに
ここにあるから
くらいかげも
こえも
かたいきばや
とげも
きみをなかせる
ものは
ここにいないから
ねむれ ねむれ
きみのつめたい
なみだをとかす
ゆめのあかりが
ここに
ここに ほら
あるよ
( 2022.1.10~2024.2.19 Twitter & あかり窓ブログより )
( イラスト作成 : 3Dペイントライブラリ & Bing Image Creator 一部に使用 )
( 音声データ song by NEUTRINO : MERROW & NAKUMO、波音 : 効果音ラボ様より )
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